農業経営の規模拡大や規模縮小を目的とする農地の貸し借りなどをする場合には、農地法第3条の規定による許可を取らなくてもいい制度が、農業経営基盤強化促進法(利用権設定)です。
農地を農地として貸し借りする場合、農地法第3条の規定により農業委員会の許可を受ける必要があります。しかし、この場合、貸した農地が戻ってこないのではないかという不安から農地の貸し手が消極的になってしまい、規模拡大を希望する意欲のある農家にとっては不利に働いてしまうことがありました。
そこで、効率的かつ安定的な農業経営を育成するという目的を実現するため、農業経営の規模拡大、生産方式・経営管理の合理化などを進めていく意欲のある農業経営者(認定農業者)を総合的に支援するために、平成5年に農業経営基盤強化促進法(以下、経基法)が制定されました。
この法令に基づき、農地の利用権設定をすることにより、農地法の許可を受けずに農地の貸借契約が可能となります。
また、これにより契約した農地は期間が到来すると貸し手に農地が返還されることとなっていますので、貸し手にとっても安心して契約することができるようになりました。
ここでは、農業経営基盤強化促進法に基づいた利用権設定に係る申し出について解説します。
農地法の第3条の許可を得て貸借権(使用貸借権を除く。)を設定した場合は、契約期限が到来しても両者による解約の合意がない限り契約は解除されませんが、経基法による利用権を設定した場合は契約期間が終了した時点で契約は解除されます。このため、農地の所有者は貸した農地が戻らないなどの不安を解消し、安心して貸し借りをすることができます。